ピロリ菌の感染経路
ほとんどが小児期に感染
ほとんどが免疫力の弱い小児期に感染する。
成人後に感染することはまれ。感染しても自然に排出されることが多い。
感染は終生持続
ピロリ菌に感染すると菌はそのまま胃に定着し、一生感染が持続。
感染経路は家庭内での経口感染(特に母子感染が多い)
感染経路
水系感染:ピロリ菌に汚染された水、食品を介した感染
家庭内感染:幼少期における親との接触(離乳食の口移しなど)
施設内感染:保育園・幼稚園、障害児施設など
医原性感染:消毒の不十分な医療行為(内視鏡、歯科治療など)
感染者の多くは小児期にピロリ菌に感染し、ピロリ菌が発するアンモニアや毒素などにより、胃粘膜が炎症(ピロリ菌胃炎)を起こします。幼少期に感染したピロリ菌は、生涯胃の中に住み続けます。何年もかけて胃は慢性胃炎へ進行し、胃粘膜の防御機能が低下していきます。やがて胃粘膜の障害、萎縮、腸上皮化生などが起こり、消化性潰瘍や胃癌などさまざまな疾患が引き起こされると考えられています。
・ピロリ菌の持続感染で胃炎から胃粘膜の萎縮に進展します。さらに腸上皮化生を経て、DNAの障害が蓄積されて多数の遺伝子異常が起こり、胃癌が発生するとされています。
・ピロリ菌感染の診断法には、内視鏡検査により採取した生検組織を用いる侵襲的検査法と内視鏡を用いない非侵襲的検査法があります。
ピロリ菌の検査法
保険診療で認められている検査法
侵襲的検査法 内視鏡検査により採取した生検組織を用いる方法 ◆迅速ウレアーゼ試験 ◆鏡検法 ◆培養法 |
非侵襲的検査法 内視鏡を用いない方法 ◆尿素呼気試験 ◆抗ピロリ抗体測定(血液) ◆便中ピロリ抗原測定 |
・除菌療法には1週間抗生物質と胃薬を内服します。
・成功率は80%~90%です。
・途中で止めてしまうと失敗しやすいので継続して内服することが大切です。
・1次除菌が失敗した場合、少し時間を空けて、2次除菌を行えます。内服薬を変更し除菌を行います。
・成功率は90%です。
・ピロリ菌は上部消化管疾患以外にも、心・血管疾患、血液疾患、皮膚疾患など数多くの疾患との関連性が指摘されています。特に、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹では、ピロリ菌除菌により改善が得られたとする報告があります。
クラリスロマイシンの耐性
⇒クラリスロマイシンに対する耐性菌の出現により、除菌率が低下している。
CYP2C19によるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の代謝)
⇒除菌失敗例ではPPI(食堂・胃・十二指腸の薬)の代謝が早い症例が多く認められる。
服薬コンプライアンスの低下
⇒コンプライアンス(しっかり薬を飲まないこと)が60%以下になると除菌率が30%低下する。除菌失敗は、耐性菌を生じる原因になる。
・現在、保険診療でピロリ菌の検査や除菌治療ができるのは、
1. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
2. 胃MALTリンパ腫
3. 特発性血小板減少性紫斑病
4. 早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃の4疾患です。
それ以外の検査や治療については自費診療となります。
除菌治療と保険診療
保険診療でピロリ菌の検査や除菌治療が可能な疾患
⇒胃潰瘍・十二指腸潰瘍
⇒胃MALTリンパ腫
⇒特発性血小板減少性紫斑病
⇒早期胃癌に対する内視鏡治療後胃
保険診療が認められている除菌レジメン
⇒一次除菌:PPI+アモキシシリン+クラリスロマイシン
⇒二次除菌:PPI+アモキシシリン+メタロニダゾール(二次除菌は一次除菌不成功の場合のみ保険適用)
・ピロリ菌の除菌治療は胃カメラにて胃潰瘍・十二指腸潰瘍等の診断があり、血液検査や呼気試験、組織検査でピロリ菌が診断されたときに保険適用可能となります。(注意・その他は自費です)
・ピロリ菌除菌により胃癌の発生リスクは大幅に減少します。
・早めに検査・診断・治療をお勧めします。
「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎も保険適応に」
「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する効能・効果追加の公知申請が平成25年2月21日に承認されて、同月22日より除菌治療が可能になりました。今回は除菌治療に関係する薬品の効能・効果の追加だけですので、感染診断、除菌判定、そして除菌治療法は従来と変わりません。しかし、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の内視鏡診断が必要であり、下記の解説を参考にした適切な対応が求められます。
[使用上の注意]
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に用いる際には、ヘリコバクター・ピロリが陽性であること及び内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎であることを確認すること。
[解説]
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の確認に際しては、患者ごとに、(1)及び(2)の両方を実施する必要があります。
(1)ヘリコバクター・ピロリの感染を以下のいずれかの方法で確認する。
迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、抗体測定、尿素呼気試験、糞便中抗原測定
(2)胃内視鏡検査により、慢性胃炎の所見があることを確認する。
なお、感染診断及び除菌判定の詳細についてひ、各種ガイドライン等を参照してください。
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