がくとう整形外科クリニック |
藤田正 |
加齢により膝の関節の軟骨がすり減るため
膝がはれたり、水がたまったりして、痛むようになる状態です。
40才くらいから発症し始めます。
発生はいつからかはっきりしないことが多いようです。
痛みより前に「こわばり感」や「だるさ」が出現することもあります。
起床時や長時間座位後の動き始めに感じられることが多いです。
やがて動き始めに痛みを覚えるようになりますが、動いているうちに消えちゃいます。
コレは関節の軟骨がぎゅっと押されたときだけ関節液が放出されるためです。
洗剤入りスポンジをイメージしていただければわかりやすいでしょう。
進行に伴い、動いている時にも痛くなってきて、逆に「動かなければ痛くないんですけど動くと痛くてねぇ」というようになります。日本人はO脚変形が多いためひざの内側が磨り減ってまず内側だけ痛くなります。また、変形で膝関節の内側が出っ張って見えるようになることもあります。
急に痛くなった場合は偽痛風や捻挫(靭帯・半月板の怪我を含む)、
安静時痛が強ければ関節リウマチなど他の疾患が、
熱感があれば炎症であり感染症ややはり偽痛風などが疑われます。
(偽痛風=結晶誘発性関節炎。痛風の場合もある)
「一次性」と「二次性」があります。
一次性は退行性(加齢)の変化によるもので、現在ではまだ決定的な原因は不明です。
二次性は外傷やリウマチ・痛風などによる関節が傷ついてしまった後の影響で起こったものです。
腫脹がある場合、水がたまっていることがあります。
関節を穿刺すると黄色透明な関節液が吸引できます。
この性情が
黄白色混濁なら化膿性関節炎か結晶誘発性関節炎、リウマチ性関節炎
血液性であれば外傷性や特殊な滑膜炎
を鑑別できます。
関節が腫れているのに水が出ない場合、変形性ではなくリウマチの関節炎で関節滑膜が腫れていて、水が引けないかごく少量のこともあります。
軟骨の磨耗→関節裂隙が狭くなり→消失する
骨棘形成や亜脱臼 部分的骨壊死など
TVでグルコサミンやコンドロイチンの飲み薬で膝がくるくる動くようになる、というCMを見たことがあると思いますがあのイメージを実現できるのは健康食品ではなくヒアルロン酸の関節内への直接注射のみでしょう。高分子化合物は飲んでも胃でばらばらになり直接膝には行かないからです。
膝の水は炎症刺激で粗製乱造された関節液が過剰に溜まったものです。
抜いたほうが膝の環境改善のためになります。
水が溜まったままだと膝周辺の筋力が低下、萎縮するという報告もあります。
抜いてもまた溜まってしまうことが多いため、抜いたら癖になる!ような誤解がありますが
溜まるままにほうっておくとどんどん溜まって100ccくらいになってしまう人もいます。関節内の炎症を改善させ、関節液の粗製乱造を直さないと水は減りません。
「膝関節」はお皿の周囲~膝の前から後ろまでぐるっと関節、なのです。
膝裏も関節なので裏の軟骨が痛んだりすればそこも痛くなるのです。
痛み止めがなぜ痛みを止めるのでしょう?それは「消炎鎮痛剤」というものだからで、組織の炎症を抑える効果があります。痛みをごまかしているのではなく組織の炎症を抑えて結果痛みが改善するのです。また、時々飲むよりしっかり内服するほうが血中濃度があがり、早く痛みが改善しますので指示どおりに飲んでいただくほうが効果があります。
1.内服(消炎鎮痛剤・漢方薬など)
基本的には坑炎症薬が主体ですが最近飲み薬と同等に効く貼り薬、オピオイド系鎮痛薬(内服やパップ)や慢性化した痛みを解消する薬が開発され、使える種類が増えて来ています。
3.消炎鎮痛処置(電気・マッサージ)
温熱療法・電気療法・超音波療法・レーザー療法・空気マッサージ器・徒手的マッサージなどで筋のリラクゼーション、血流改善、関節の除痛などを図ります。
4. リハビリ(筋力強化)
「減量指導」 肥満がある場合は減量が大事です。体重が3-4Kg減っただけで膝にかかる負担が減り痛みが改善します。目標BMI(体重Kg/身長m二乗)の数値を25以下に。
「生活指導」 正座・しゃがみこみ 階段昇降を避ける 高齢者では必要なら杖・シルバーカーをお勧めします。
「運動療法」 定期的な有酸素運動 筋力強化訓練 関節可動訓練を行います。膝の痛みがある間に我慢してウオーキングをするのは止めた方が良いです。もっとも大切なのは非荷重で行う大腿四頭筋の訓練で、自宅ですることで関節腫脹・関節痛が改善します。
5. 装具
O脚の膝に対して外側楔状型の足底板を使います。
横へのずれを防止するためヒンジがついた膝固定サポーター装具などもあります。
6. 関節内注射
ヒアルロン酸・激しい痛みの時はステロイドの関節内注射療法を行うと症状改善します。
7. 手術療法
「関節鏡視下デブリドマン」 傷んだ半月板や遊離体が歯車の間の小石のようになって膝が引っかかって伸びなくなる状態や関節に水がたまってなかなか治らない場合に関節鏡で関節の中を掃除する方法です。
「軟骨修復」
関節の欠損部の骨に穴を開けて新鮮化する方法や自分の膝関節の体重のかからない部分の軟骨を移植する方法、自分の軟骨細胞を培養増殖させて移植する方法などが行われます。
「骨きり術」 体重のかかる部位を骨を切って変化させ、で疼痛のある場所の負担を減らす方法。比較的若くスポーツを継続したい人などに適応があります。
上記色々な方法はりますが、高齢の方には安定した成績のある「人工関節置換術」が薦められます。
人工膝には
内側あるいは外側のみ置換する片側置換型「UKA」、関節表面全体を人工物に取り替える全置換型「TKA」があります。
TKAは国内で年間6万件以上行われており、15年で95%以上壊れないという安定した成績を誇っています。
手術の適応のある重度変形の人が手術をする時期を逃すと要介護状態になってしまいます。家族に迷惑をかけないため、歩き続けるためには必要なタイミングに手術するべきです。
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