たけなか三島東町クリニック |
竹中俊介 |
尿路結石症は尿の成分の一部が固まってできた結石が尿の流れを阻害することで痛み等の症状が出る病気です。結石のある部位によって、腎結石、尿管結石、尿道結石と呼び分けられています。
女性よりも男性の方が罹患しやすく、男女比はほぼ5:2。
日本では1年間でのべ14万人が罹患していて、1995年から2005年までの10年間では1.6倍に患者数が増加しています。
その原因は食生活の欧米化や寿命の延伸による高齢化と考えられていますが、CTの普及による診断技術の向上の影響もあります。
男性は40歳代、女性は50歳代に発症のピークがあり、男性患者は肥満の人が多く、メタボリックシンドロームの合併も多く見られます。親、兄弟にも尿路結石症がいるといった家族歴のある人は、平均よりも若年で発症することが多く、再発も多く繰り返します。
尿路結石による疝痛発症は激しい腹痛と腰背部痛、陰部や大腿部への放散痛が特徴です。冷汗、顔面蒼白とともに、悪心、嘔吐や腹部膨満などの消化器症状も見られます。まずは副作用の少ない超音波検査が行われますが、感度は78%で結石が同定できないことも多いです。単純レントゲン検査も感度は44~77%と感度は低く、単純CT検査が感度が94~100%と高いため、標準的な診断方法となっています。
尿路結石症の痛みに対してはロキソニン、ボルタレンといったNSAIDsと呼ばれる鎮痛薬が用いられ、ブスコパン等の鎮痙薬はあくまでも補助薬剤です。妊娠中はNSAIDsを用いることができないため、アセトアミノフェンで鎮痛が行われます。
漢方の芍薬甘草湯が即効性があり、鎮痛効果があったという報告もあります。結石を溶かす薬剤はなく、結石を出しやすくする薬剤もしっかりとしたエビデンスのあるものはないのが現状です。
尿路結石症の6割は自然に体外に排出されますが、4割は手術が必要になります。10mm以上の大きさの結石は自然排石の可能性が高くないため、積極的に手術を考慮するべきであり、1カ月以内に自然排石しない場合も手術が考慮されます。
《体外衝撃波結石破砕術ESWL》
体外で発生させた衝撃波により、人体内の結石を破砕します。
多くは無麻酔で、外来での日帰り治療が可能です。
腎盂尿管鏡が細くなり、格段の進歩を遂げています。ESWLより完全排石率が高いのですが、入院と麻酔を要します。
大きい腎結石などに行われる手術で、最も技量と経験が要求されます。侵襲が大きく、合併症も20%以上と多くみられます。
再発予防の基本は飲水です。心臓等に問題ない方は2,000ml程度の飲水が推奨されています。結石の主要成分であるシュウ酸の摂取に注意する食事療法も重要です。シュウ酸は葉菜類の野菜、タケノコ、紅茶、コーヒー、お茶、バナナ、チョコレート、ココア、ピーナッツ、アーモンドといった食材に多く含まれています。 静岡県の名産であるお茶は玉露の状態が最もシュウ酸を多く含んでおり、抹茶、 煎茶、番茶、ほうじ茶の順にシュウ酸が少なくなっています。シュウ酸を多く含む食材を摂取するときは、カルシウムと一緒に摂取する、おひたしにして含まれるシュウ酸を減らすなど工夫が必要です。またプリン体の取りすぎ、塩分の取りすぎも尿路結石再発の危険因子となるので、注意するようにしましょう。
(尿路結石症診療ガイドライン2013年版から引用改変)
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