たけなか三島東町クリニック |
竹中俊介 |
中高年男性が下部尿路症状(LUTS)を有する頻度は高く、加齢に伴ってさらに頻度は増加します。
日本の40歳以上の男性では、夜間頻尿、昼間頻尿が特によく見られ、尿勢低下、残尿感、尿意切迫感なども見られます。加齢の他、心疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満といった生活習慣病との関連が指摘されています。
前立腺肥大症は中高年男性にみられる進行性の疾患で、有病率は60歳代で6%、70歳代で12%とされています。
危険因子としては加齢の他に、遺伝的要因もあり、父親、兄弟に前立腺肥大症の手術歴がある方は前立腺肥大症のリスクが3-6倍と報告されている。
前立腺肥大により、膀胱が進展、虚血、炎症状態となり、頻尿、尿意切迫感といった畜尿症状が出現します。
過剰な水分摂取を控える、アルコール、カフェインの摂取制限、肥満に対する食事指導などの生活指導が最初の治療となりますが、改善が乏しい場合は薬物による治療が必要となります。
α1アドレナリン受容体遮断薬(タムスロシン、シロドシンなど)は前立腺と膀胱頸部の平滑筋の緊張を抑え、膀胱出口部の閉塞を減少させることにより、下部尿路症状を軽減します。
ホスホジエステラーゼ5阻害薬(タダラフィル)は細胞内の一酸化窒素(NO)の作用を増強し、平滑筋を弛緩させ、下部尿路症状を改善します。
5α還元酵素阻害薬(デュタステリド)は男性ホルモンであるテストステロンの細胞内での活性化を抑え、前立腺を縮小させ、前立腺肥大症に伴う症状を改善します。
前立腺肥大症と過活動膀胱は併発することが多く、抗コリン薬、β3アドレナリン受容体作動薬といった薬も併用されることがあります。
薬物療法の効果が不十分の際には手術が考慮されます。経尿道的前立腺切除術(TURP)が標準的な術式ですが、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)、レーザー光選択的前立腺蒸散術(PVP)といった新しい術式が普及してきています。
(男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドラインより引用改変)
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