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白内障

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吉村眼科内科医院
吉村弦

1、白内障とは?

『白内障』と聞いて知らない人はいないのではないかと思われる位、眼科では身近な
手術の対象となる疾患になっています。TV・雑誌の健康コーナーでもよく取り扱われています。
物が見える仕組みは、『花がきれいだな』と思ったら、花の画像は光に乗って角膜⇒
水晶体⇒網膜へと集まります。眼底に逆さまに映った画像は視神経を通って
『花を見ているよ』と脳に信号を送ります。
水晶体は透明で、外から入ってきた光を屈折させ、網膜にピントを合わせるレンズの働きをしています。
そのレンズ、水晶体が白く濁る事を『白内障』と言います。
症状は様々です。視力低下・ぼやける・かすむ・ものがだぶるなどありますが、他の眼疾患も同じような症状が出ますので、自己判断をせずに一度眼科を受診しましょう。

 

2、治療方法は?

目薬と手術の二つがあります。白内障の進行を進みにくくする目薬はありますが、完全な治療となると手術しかありません。手術の時期については人それぞれです。ご本人の生活スタイルで見えにくさや、不自由を感じたら手術するのがよいでしょう。
ご自宅で見え方の自己チェックをしましょう。両眼で見ると、見える方の眼で物を見ています。そのためもう片眼が見えにくくなっている事に気づきにくいものです。右手で右眼を隠し、左手で左眼を隠してそれぞれ見え方のチェックをしてみましょう。
「免許の更新ができなかった」と来院される方がいます。白内障の手術は両目同時にすることはほとんどありません。最低片眼の手術後数日から一週間は置いてからもう片眼の手術をします。両眼の手術を終えて1ヶ月過ぎる頃視力も安定してきますので、その頃に眼鏡をつくるようにしましょう。

 

3、白内障の手術

眼球にメスを入れ、「濁った水晶体」の中身を
砕いて吸い出し、水晶体の皮(後嚢)の前に眼内レン
ズを置き換えます。これで手術は終わりです。
手術時間は、一人一人違います。手術前に検査を受
け、安易なマスコミの報道に振り回されず、説明を
しっかり聞き、手術に臨んでください。

 

4、眼内レンズ

昔は、『白内障』の手術の後に分厚い眼鏡や、コンタクトレンズをしてピントを合わせていましたが、今は眼内レンズをいれてピントを合わせています。眼内レンズは、硬い素材・柔らかい素材とありますが、柔らかいアクリル系・シリコーン系を使う事が多いようです。
眼内レンズは、各社医療機器メーカーが眼に優しく、術後の安全・安心できるものを競い合い開発しています。そのおかげで、単焦点レンズ・乱視を軽減できるレンズ・遠近両用のレンズ(多焦点)など種類も多くなっています。
若い時の眼は毛様体の力で水晶体の厚みを変えて、遠くも近くもピントを合わせていました。この動きがうまくできなくなることを『老眼』と呼んでいます。

 

 

4ー①単焦点眼内レンズ(保険診療)
『遠視』と同じように遠くはまあまあ見えますが、近くは『老眼鏡』が必要になります。また、乱視のある方は、多少減らすことはできますが、全くなくなる事はありませんので、結果的に遠くも近くも眼鏡が必要になります。

4―②多焦点眼内レンズ(自由診療)
年々メーカーの努力で開発が進んでいますが、若い頃の自分の眼のようなわけにはいきません。ご自分の一番見たいところは、生活スタイルによっては変わってきます。
3m~5m以上離れたところなのか、1m~2mの中間距離なのか、40cm~50cm位の読書や書き物・PCなど手元の距離なのか、と分けて考えてみてください。また、光がまぶしく見えるハロー・グレアやコントラスト感度の低下など、夜の運転や雨の日、図面を見たりする職業の方には課題は多いといえます。その上大変高価なレンズになりますので良く検討する必要があります。自由診療ではありますが、先進医療特約付きの生命保険の利用や、先進医療の認可を受けている医院もありますので、白内障の手術を受けるときには、よく検討してください。

 

5、視 力

『白内障』の手術をしたからと言って、誰でも良く見えるようになる訳ではありません。「水晶体」はあくまでも光を集めるレンズの働きをしています。実際に視力を出すのは、眼底にある黄斑部という所です。そこに異常が出ると視力低下や、見ようとする所が黒くなったり、ゆがんでみえたりします。『白内障』の手術後にこれらの症状が悪化したように感じる方もいます。これは水晶体の濁りよってカバーされていたものが、濁りが取れ、光が入るようになり黄斑部の疾患がクローズアップされたからです。この他にも糖尿病・高血圧・眼底出血・緑内障・強度近視・角膜混濁などにより『白内障』の手術をしても思うように視力が出にくい場合があります。

 

6、手術~手術後

6-① 『白内障』の手術は、医学の進歩とともに異常がなければ10分~30分位の短い時間で行われるようになりました。そのため、日帰り手術が大半を占めるようになりました。しかし、眼にメスを入れる訳ですから何が起こるかわかりません。一人暮らしだったりすると不安や心配も大きいと思います。入院して『白内障』の手術を受けられる所もありますので、主治医の先生にご相談ください。

6-② 抗菌薬の開発も進み手術後のリスクも大幅に軽減されるようになりました。手術当日の入浴やシャワーは控えた方がよいでしょうが、3日~5日もすれば髪の毛や顔を洗ったりできます。しかし、眼を強くこすったり、眼の中に汗やほこり、シャンプーや石鹸が入らないように1ヶ月位は注意が必要です。お仕事を始める時期は職種にもよりますが3日~5日後を目安にしましょう。眼の中に菌が入ると、視力低下だけではなく、視力が出なくなる事もあります。職場に相談してくれぐれも無理のないように、手術の計画を立ててください。

6-③ 手術後1ヶ月もすると視力も安定してきます。
その頃に見えにくい部分は、メガネを作って矯正しましょう。
遠くが見えにくいのか、本を読む時に見えにくいのか、
何を見たいのか?検査の時しっかり伝えてメガネを
つくってください。

 

6、最後に

「見えにくい眼」と、「良く見える眼」と両眼で
見ると「良く見える眼」の方で頑張って物を見ます。
そのため、見えにくくなっている事さえ気が付かないことがあります。
また、物が歪んで見えていたり、見ようとする所が欠けていたり、膜が張っている、虫が飛んでいるなどの症状をいち早く見つけるために、片眼を自分の手で隠し確認する癖をつけましょう。体の健康診断と同様、眼の健診も受ける事をお勧めします。

 

吉村眼科内科医院   院長 吉村 弦

 

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