みしま南口クリニック |
三浦興一郎 |
「適応障害」は、何らかの強いストレスをきっかけに、社会生活に支障をきたしている状態です。好ましくない出来事や、その結果生じた状況が続いたために、いろいろな症状が出てくることがあります。憂鬱な気分がずっと続く、不安がずっと続く、イライラが続く、怒りっぽくなる、などです。さらに、攻撃的になったり、体の症状が出てきたりすることもあります。そのため家庭や学校、職場で活動できなくなります。家事ができない、登校できない、出勤できないなど、生活に支障をきたしてしまいます。国際的な診断基準(ICD-10やDSM-5)で規定されています。
適応障害は一時的な反応で、ストレスがなくなれば、元に戻っていきます。ストレスがなくなっても具合の悪さが長く続いたり、ストレス自体が長く続いている場合は、「適応障害」を経てから別の診断名を付け直すことになります。このように、診断は具合の悪さの内容だけで決まるのではなく、ストレスとの時間的な関連性によって決まります。
同じストレスを受けても、具合の悪くなる人とならない人がいます。そのストレスに対する耐性が、人それぞれで違うからです。また、立ち直りの早い人と時間がかかる人もいます。ストレスに対して順応・適応する力が、人それぞれで違うからです。ですので、同じストレスにさらされても、適応障害になるならないは、人それぞれです。(どんな人でも具合が悪くなるであろう苛烈なストレスに晒されて具合が悪くなった場合は、別の診断名になります。)
例えば
職場での異動や昇進で、業務や環境・人間関係が大きく変わった結果、自信をなくして不安で眠れなくなった。
進級・進学して友人関係がうまくいかず、体調も崩れて学校に行けなくなった。
住居や家族構成が変わって、日常生活上のストレスが持続し、イライラして落ち着かなくなった。
治療ではストレスの緩和・除去の支援をします。それが難しければ、辛い環境にどうすれば少しでも適応できるのかを考えます。反対に、気分転換の支援も行います。
症状を一時的に緩和するために薬を使うこともありますが、「薬を飲めば治る病気」とは異なります。薬を飲んでもストレス因はそのままですし、副作用も伴いますので、飲むメリットの方が大きい場合に限られます。薬によっては、眠気が出てミスが増えてしまったり、元気が出たものの攻撃的になってしまったりと、事態がかえって悪化してしまうこともありえます。
周囲の協力と本人の内面の変化により、難しい環境への適応をめざして行く事になります。周囲の協力はもちろん大切ですが、似たような状態になることを繰り返さないためには、本人の内面の変化も大切です。
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