全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が見られる病気の総称である膠原病の代表格です。
病気の原因はまだ不明ですが、免疫系(細菌などから体を防御するシステム)に異常があることはよく知られています。からだのあちこちの関節に炎症が起こり、関節が腫(は)れて痛む病気です。進行すると関節の変形や機能障害(使えなくなること)が起こります。
どの年齢の人にも起こりますが、30歳代から50歳代で発病する人が多く、女性に多く認められます(約3倍)。このため遺伝子の何らかの異常か?感染した微生物(ウイルスや細菌)の影響か?あるいは両方の組み合わせによって起こるのではないかと考えられています。
関節リウマチの症状には、関節の症状と関節以外の症状があります。
手指(指の付け根の関節、指先から二番目の関節)、足趾、手首の関節などの痛みと腫れ、あるいは熱感が数週間から数か月の間に徐々に起こります。他の関節にも同様の症状がみられる場合があります。最終的には左右の関節に生じるのも特徴です。
朝、起きたときに最も強く感じるので「朝のこわばり」とよばれます。もちろん朝だけではありませんが、そのこわばりの時間が長いほど病気が活動的であると言われています。
関節痛は、よくなったり、悪くなったりをくり返しながら慢性の経過をたどりますが、なかには、数か月で完全に治ってしまう人もいます。
症状は天候に左右されることが多く、暖く晴れた天気が続くときは軽く、天気が崩れ出す前や雨の日、寒い日には痛みが強くなります。夏でもエアコン冷房の風が直接関節部にあたることなどで関節痛が強くなります。
病気が進行すると、関節の骨や軟骨が破壊されて関節の変形が起こり、関節を動かせる範囲が狭くなります。
手指が小指側に曲がる尺側偏位、足の親指が外側に曲がる外反母趾、膝や肘が十分に伸ばせなくなる屈曲拘縮などがみられます。
首の関節が侵されてずれやすくなる(環軸関節亜脱臼)と後頭部が痛んだり、手の力が入りにくくなったりしびれたりします。
全身症状として、疲れやすさ、脱力感、体重減少、食欲低下がみられます。
肘の外側、後頭部、腰骨の上など圧迫が加わりやすい部位の皮下にしこりを生じることがあります。皮下結節とよばれこれもリウマチの特徴です。
涙や唾液が出にくくなるシェーグレン症候群や、SLE等他の膠原病が合併する事も少なくありません。
関節リウマチの診断には、血液検査・エックス線検査・超音波検査があります。
血液検査で使用されるのは、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体、軟骨破壊の指標となるMMP-3、炎症の指標となるCRPなどがあります。
進行の検査として、血液検査や関節、胸部のレントゲン写真を定期的に撮影します。
超音波にて関節の評価をします。最近ではMRIも有用です(他院依頼)。
治療は薬物療法を長期にわたって行うので、くすりの副作用に気をつけるための検査が必要です。
根治療法は今のところ困難ですが、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬や生物学的製剤を積極的に使うことによって患者さんのQOLを維持し、寛解を導くことが可能となってきています。
薬物治療には以下のようなものがあり、これらを組み合わせて治療していきます。
1.非ステロイド抗炎症薬(消炎鎮痛薬)
2.副腎皮質ステロイド(ステロイド)
3.抗リウマチ薬と免疫抑制薬
4.生物学的製剤
5.JAK阻害剤薬
近年の薬物療法の開発は、関節リウマチと診断されてから手術までの期間を以前と比べ明らかに延ばしていることが最近の疫学調査からも明らかにされています。つまり、手術しなくていい可能性が上がってきていると考えられます。
しかし、まだまだ関節障害のため手術が必要な患者さんも大勢いらっしゃいます。
薬物療法などを駆使して快適な日常生活を過ごせるよう最大限の努力を払うべきことは言うまでもありませんが、万策尽きて関節障害のため日常生活に支障をきたした場合には、手遅れにならないうちに遠慮せず手術療法という選択を視野に入れるべきです。
手術法は大きく分けて以下の4種類になります。
1)人工関節置換術:
高度に破壊された関節に対する手術です。主に膝関節と股関節ですが、最近ではその他の関節(肩・肘・指・足・足趾)でも良好な術後成績が報告されるようになってきました。
2)関節固定術:
関節を固定することで、確実な除痛と支持性を得るために行われます。主に行われるのは頸椎・手関節・足関節・手指(特に母指)や足の母趾などです。
3)滑膜切除術:
炎症性の腫れている滑膜を関節から取り除く術式です。近年の生物学的製剤による治療は増殖した滑膜も著しく退縮させることが出来ることから、適応症例が減ってきているのが現状です。
滑膜切除術は頸椎を除く全ての関節で可能ですが、主に行われる関節は肘・手関節・指・足関節などです
4)関節形成術:
初期から中期のまだ関節の形状が残っている状態の時、関節の一部を削ったりして形を整えて機能や整容を回復させる術式です。足趾・手首・肘・指などで行われます。
全ての患者さんが適応となります。
理学療法・作業療法・装具療法などがあります。
A-1.物理療法
温熱や光線などの物理的エネルギーを利用して治療を行う手段です。運動療法と併用して行われることが多く、疼痛や腫脹の軽減を目的に行われます。
大きく温熱療法・寒冷療法(当院無し)・光線療法・水治療(当院無し)・その他に分類することが出来ます。
温熱療法は筋肉の緊張緩和や局所血流の改善により疼痛や腫脹を改善します。
寒冷療法は熱感のある急性炎症状態の関節に対し、局所的な治療として用いられます。
光線療法には温熱作用と組織修復作用があります。
その他に牽引・マッサージなどがあります。
A-2.運動療法
関節可動域(ROM)の獲得、筋力増強、傷んだ関節の修復のために行われます。傷んだ関節があるのに運動負荷をかけることは逆効果のように思われますが、関節軟骨の新陳代謝に必要な栄養は関節を運動させることによってはじめて関節へ届けられる仕組みになっています。したがって傷んだ関節を修復させるためには運動が必要となります。
関節を伸ばすストレッチ運動を習慣づけるようにしましょう。
絶対安静の状態で筋力は1日約5%の割合で低下し、骨塩量も週当たり0.9%の割合で失われることになります。
関節リウマチでも痛みの誘発や疲れが出ない範囲で筋力増強訓練が必要と言われる所以です。
例えば、軟式テニスボールなどの柔らかい素材による握力訓練も有用です。電気刺激による筋の収縮訓練も関節リウマチの筋力増強効果があることが明らかにされました。
B.作業療法
重症関節リウマチでは自助具や家屋改造により最低限の身の回り動作の獲得を目指します。
日常生活を楽にするための様々な自助具があります。
杖は歩行を楽にしてくれます。病態に応じて各種あるので自分にあったものを選ぶ必要があります。
フィッシャー杖(握力のないヒトでも持ちやすく握りの部分を手の形にしたもの)
ロフストランド杖(手首の負担を軽減)
前腕プラットフォーム杖(手首に加え肘関節の負担も軽減)
四点支持杖(安定性を要求される時に用いる)
他、携帯用の折りたたみ式のものや、材質をアルミやチタンなどの軽量タイプしたものなど様々あります。
C.装具療法(当院では木曜に装具技師が在院しています)
低下した関節機能の代償や疼痛関節軽減を図る治療的目的や、壊れやすくなった関節を保護する予防的目的のため装具療法が利用されます。装具も体も徐々に変形しますし、装具の使用感は各人で異なるので、自分にあった装具を用いることが大切であり、装具屋さんとの十分なコミュニケーションが大事です。
例えば、後足部では踵の骨が外に向き着地部が踵でなくなるため、足の裏にタコや魚の目が出来ます。前足部では外反母趾や内反小趾に加え、その他の足趾が屈曲変形(槌趾変形)するため全体としてつま先が三角形状の変形を呈します。足裏の靭帯も弛緩するため扁平足にもなります。
進行期では専用足装具や足底にクッションパッドを入れた足底板が使われます。
多くの場合保険も適応されます。
活動性が高いときは、微熱があり、疲れやすくなります。
炎症の強い部位の関節は腫れや熱感があり、安静にしても痛み(自発痛)、関節を動かすと一層痛みが強くなります(運動時痛)。
関節リウマチは関節だけでなく、全身が消耗する病気です。そのため、全身と関節の安静が必要です。
睡眠を十分にとるとともに、昼間も疲れたら昼寝をとることが大切です。