不妊症

・・診断編

どういう人が不妊なの？

最初の検査は？

妊娠するために、絶対必要条件が2つあります。1つは卵管因子です。過去の腹膜炎やクラミジア感染などで、両側の卵管が閉塞していれば、精子と卵子が出会えませんので、普通の方法では絶対妊娠しません。最初から体外受精しか方法がないということになります。腟から器具を入れ、子宮の出口から造影剤を注入し、卵管が通過しているかをレントゲンでみる方法があります。これを子宮卵管造影といいます。卵管の通過性を見るのが目的ですが、検査後卵管のすべりがよくなり妊娠しやすくなるという治療効果もあります。ただし、生理開始日から10日以内に行う必要があるのと、検査が少し痛いです。

精液検査

もう1つの条件は精子因子です。精子が全くないのでは妊娠しませんし、少なくても妊娠しずらくなります。不妊症の25％は精子が原因（男性不妊）とされています。これを調べるのは比較的簡単です。 マスターベーションで精液を容器にとってもらい、1時間以内にクリニックに持ってきていただければ、顕微鏡で検査できます。1mlの精液に普通は1億個位の精子がいます。5000万未満では乏精子症とされます。またまっすぐ動く精子の割合を運動率といい、運動率が50％未満では妊娠しずらいとされています。この2つの因子で異常があると大きく治療方針が変わるため、まずこの2つの検査をします。

機能性不妊が一番多い

しかし、実際はこの2つの検査で異常の無いカップルが一番多く、これを機能性不妊を呼び、不妊症の60％を占めます。現代医学では原因不明の不妊と理解してよろしいでしょう。

・・治療編

まず、排卵誘発剤（クロミッド）から

さて、機能性不妊でも（ちゃんと排卵している人でも）、排卵誘発剤をのむと妊娠率が上昇することがわかっています。排卵誘発剤は生理5日目から5日間内服する薬でクロミッドといいます。副作用はほとんど無く、双子の危険が自然妊娠なら1～2％が5％位になるだけです。重症な排卵異常に対する、注射による排卵誘発剤はかなり強い副作用があり、慎重に行わねばなりませんが、この内服薬ならほとんど心配はいりません。また、薬をのむと生理14日目位に排卵するようになります。最初の治療は（1）；排卵誘発剤をのんで14日目（基礎体温表で排卵日と思われる日）に性交渉を持つこと（3ヶ月）です。それで妊娠しない人は（2）；（1）を飲みながら生理14日目位から毎日3～4日通院して排卵日のチェックをします。今日排卵するという日まで（精子がうすくならないように）禁欲し、その日に性交渉を持つわけです。これも3ヶ月します。3ヶ月というのは同じ治療を繰り返しても妊娠しづらいので、その後はステップアップした方がいいとされています。

次は人工受精（AIH）

それでも妊娠しない人はは（3）；（2）をしながら排卵日に動きのいい精子を抽出し子宮の中に入れる、人工受精をします。これは6ヶ月します。なぜ6ヶ月かというと、データ的に7回目以降に妊娠する確率は非常に低いためです。しかし、人工受精は自費で1万円位かかる治療で、妊娠率も対患者さんで10％位です。

さらには体外受精（IVF-ET）

さらなる治療を希望する方は体外受精となり、いわゆる試験管ベビーといわれるもので、体外で受精させ細胞分裂した胚細胞を子宮に戻すという方法です。これも自費で1回20-30万円くらいかかります。当院では行っておらず、専門の施設に紹介しております。

ステップアップするほど、治療は手間やコストがかかり、副作用も大きくなります。どこまでの治療を希望するかはご夫婦でよく話し合い、先生と相談しましょう。