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日本脳炎

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日本脳炎

日本脳炎とは
日本脳炎(にほんのうえん、Japanese encephalitis)は、日本脳炎ウイルスによって引き起こされる急性脳炎です。蚊を媒介として感染し、感染者のうちごく一部が重篤な脳炎を発症します。日本国内では発症数自体は非常に少なくなっていますが、発症した場合の致死率や後遺症の頻度が高く注意が必要です。

日本脳炎ウイルスの感染経路
日本脳炎ウイルスは、豚や水鳥などの動物の体内で増殖し、それを吸血した蚊が媒介となってヒトへと感染を広げます。ヒトからヒトへの感染はないとされています。感染のピークは蚊が活動する夏季で、特に7月から9月にかけてリスクが高まります。
日本では定期的に豚の抗体保有率が検査が行われています。豚の抗体保有率と蚊がウイルスを持つことに相関関係があるとされています。静岡県は豚の抗体保有率が高い県のため積極的な予防接種をお考え下さい。

症状と経過
日本脳炎ウイルスに感染しても、多くの人は無症状または軽い風邪症状で終わります。しかし、約1,000人に1人の割合で脳炎を発症し、重篤な経過をたどることがあります。


主な症状(脳炎発症時)
  • 高熱(38〜40℃台)
  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 意識障害(呼びかけへの反応が鈍い、昏睡など)
  • 痙攣(ひきつけ)
  • 筋肉の硬直、麻痺
  • 運動障害、精神症状

発症から数日で急激に症状が悪化することが多く、特に小児や高齢者では致死的となる場合があります。致死率は約20〜30%、生存者のうち約半数に後遺症(知能障害、運動障害、けいれん発作など)が残るとされます。


診断と治療
日本脳炎はウイルス性脳炎のひとつであり、症状や脳波、画像診断、血液・髄液中の抗体検査などをもとに診断されます。

有効な特効薬は存在せず、治療は対症療法(症状をやわらげる治療)が中心となります。けいれんや脳浮腫(脳の腫れ)に対する治療、呼吸管理などが必要になることもあります。


予防法:ワクチン接種
日本脳炎を防ぐ最も効果的な手段は、**予防接種(日本脳炎ワクチン)**です。日本では定期予防接種として、生後6か月〜7歳6か月未満の間に3回の接種(初回2回+追加1回)、その後9歳以上13歳未満で1回の追加接種が推奨されています。
2025年現在、ワクチンの安全性は確立しており、副反応も非常に少ないとされています。一部、過去にワクチン接種を見合わせた年代(2005年前後生まれ)では、未接種のままの方もいるため、必要に応じて「特例救済接種」が可能です。


日常生活での予防
  • ワクチンに加えて、蚊に刺されない工夫も重要です。
  • 長袖・長ズボンの着用
  • 虫よけスプレーや蚊取り線香の使用
  • 窓やドアに網戸を設置
  • 蚊の繁殖源となる水たまりをなくす。空き缶や廃タイヤなど、比較的きれいな水たまりが蚊の発生源とされています。
  • 特に野外で活動する機会が多い子どもや農作業を行う成人は、蚊に刺される機会が多いため注意が必要です。

発症が少ない今だからこそ接種を
日本ではワクチンの普及により、日本脳炎の発症数は年間数人にまで減少していますが、これは「発症が少ない」のではなく、「ワクチンで抑えられている」結果です。もし予防接種率が下がれば、流行再燃のリスクがあります。静岡県内では豚の抗体保有率が高く注意が必要です。

また、日本脳炎ウイルスはアジア全域に分布しており、海外渡航(東南アジアなど)時には追加接種が推奨されることもあります。


当院での対応
当院では、日本脳炎ワクチンの定期接種・特例救済接種に対応しています。未接種の方や、接種時期が過ぎている方もご相談ください。

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