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百日咳

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百日咳

百日咳は、百日咳菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。特徴的な長引く咳が数週間から数か月続くことから「百日咳」と呼ばれています。特に乳幼児では重症化のリスクが高く、注意が必要な疾患です。

日本では定期予防接種の普及により発症数は減少しているものの、近年では10代以上の年長児や大人でも感染する例が増えており、知らぬ間に乳児や高齢者に感染し重症化するケースがあります。

百日咳の症状
百日咳は、症状の進行に応じて以下の3つの時期に分かれます。
① カタル期(1〜2週目)
風邪のような症状が続きます。鼻水、軽い咳、微熱が中心で、この時期はまだ百日咳と判断しにくいことが多いです。しかしこの時期が最も感染力が強く、周囲にうつす可能性が高いため注意が必要です。
② 痙咳期(2〜6週目)
次第に咳が強くなり、発作的な咳が繰り返し起こるようになります。特に「コンコンコン…ヒュー」という笛のような吸気音(whooping)が特徴的です。咳き込みのあと嘔吐することもあり、乳児では呼吸困難や無呼吸を起こすことがあります。
③ 回復期(数週〜数か月)
咳は徐々に軽くなりますが、完全におさまるまでに数週間から数か月かかることがあります。特に就寝中や気温変化で咳がぶり返すこともあります。咳のため生活に支障がある場合は、咳止めなど使用します。


感染経路と潜伏期間
百日咳は「飛沫感染」で広がります。咳やくしゃみに含まれる細菌を吸い込むことで感染します。潜伏期間は平均7〜10日程度で、症状が出る前から周囲に感染させる可能性があります。
特に免疫のない乳児が感染すると、重症化しやすく、場合によっては呼吸停止や脳症を起こすこともあるため、家庭内で感染者が出た場合は特に配慮が必要です。


診断と検査
乳幼児や長引く咳を主訴とする患者では、症状や聴診、家族歴から百日咳を疑うことがあります。確定診断には、鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査や培養検査、血液検査による抗体測定などがあります。ただし、検査の感度やタイミングにより陰性でも百日咳を否定できるわけではありません。当院ではPCR検査を施行できますが、全例に行えるわけではないためご了承ください


治療法
百日咳の治療には、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が用いられます。発症早期であれば症状の進行を抑える効果がありますが、咳が始まって時間が経過している場合は、症状の軽減効果は限定的で、感染拡大防止を目的として投与されることが多くなります。また、近年はマクロライドに耐性を持っている百日咳菌も増えているため、感染予防を重視してください。
咳が強く長期間続くため、十分な休養と水分補給、咳の刺激を避ける環境整備が重要です。特に乳児は入院管理が必要になることもあります。

予防とワクチン接種
百日咳に対する最も有効な予防策は「定期予防接種」です。日本では、5種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ・Hib)として、生後2か月から複数回の接種が推奨されています。
ただし、百日咳に対する免疫は時間とともに低下するため、思春期以降や成人では再感染のリスクがあります。特に乳児を育てる家族、保育士、医療従事者などは、必要に応じて追加接種(Tdapワクチンなど)が推奨されることもあります。


こんなときは受診を
  • 咳が2-3週間以上続く
  • 咳き込んで吐く
  • 咳の後に「ヒュー」という音がする
  • 乳児の呼吸が止まる、一時的に顔色が悪くなる
  • 家族や学校など咳をしている人が複数いる

上記のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。特に乳児や基礎疾患を持つ方は重症化リスクが高いため、早期の診断と治療が重要です。

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