ヘルパンギーナとは
ヘルパンギーナは、エンテロウイルス(特にコクサッキーウイルスA群)によって引き起こされる、突然の高熱と口の中の水ぶくれを特徴とするウイルス性の咽頭炎です。主に夏季に流行し、5歳以下の乳幼児、特に1歳代のお子さまによく見られます。
原因・感染経路
- 原因ウイルス:コクサッキーウイルスA群が主な原因です。まれにB群やエコーウイルスも関与します。
- 感染経路:
- 飛沫感染(咳やくしゃみによる)
- 接触感染(手指やおもちゃ、ドアノブなどを介して)
- 糞口感染(便に含まれるウイルスが口から体内に入る)
- 潜伏期間:2〜4日程度。
- 排泄期間:症状が治ったあとも、2〜4週間ほど便からウイルスが排出され続けることがあります。
症状
- 初期症状:突然の高熱(39〜40℃)と咽頭痛が現れます。
- 口の中の所見:軟口蓋や口蓋弓といった喉の奥に、直径1〜2mm(大きい場合は5mm程度)の小さな水ぶくれができ、それが破れて浅い潰瘍となり、強い痛みを伴うことがあります。
- 経過:発熱は通常2〜4日で治まり、水ぶくれや潰瘍も数日以内に自然に消失します。
- 合併症:まれに脱水、熱性けいれん、無菌性髄膜炎、心筋炎などを引き起こすことがありますので注意が必要です。
対処・治療法
- 特効薬やワクチンはありません。治療は症状を和らげる「対症療法」が中心となります。
- 主な対応:
- 解熱剤(アセトアミノフェンなど)を使用して熱を下げます。
- 痛みが強い場合は、のどの炎症を抑えるような薬や口内炎に軟膏を使用することもあります。
- 水分をこまめに摂り、冷たくて刺激の少ない食事(ゼリーやおかゆなど)をおすすめします。
- のどの痛みが強すぎて水分摂取が困難な場合は、医療機関で点滴による水分補給が必要になることもあります。
- ご家庭でのケア:安静に過ごし、十分な休養と栄養をとることが大切です。もし嘔吐や頭痛が強い場合は、無菌性髄膜炎などの合併症も疑われるため医療機関を受診してください。
予防・感染対策
- ワクチンがないため手洗いやうがい、咳エチケットなどの基本的な感染予防が重要です。
- おもちゃや家具などは、次亜塩素酸ナトリウムなどを使って定期的に消毒しましょう。
- おむつの処理後は速やかに廃棄し、石けんで丁寧に手洗いを行ってください。
- 特に夏季の流行期は、保育施設など集団生活の場での感染拡大に注意が必要です。