頭の中(脳など)、胸の中(肺や心臓などの内臓)、お腹の中(肝臓や腸などの内臓) 以外はほぼすべて整形外科で治療を行います。代表的なものを以下に記載します。
切り傷、擦り傷(すりきず)、刺した傷など、傷全般
傷のために当院を受診された患者様の多くが 「切り傷なんだけど何科に行っていいかよくわからなくて…」と言われます。傷の治療は外科や整形外科で行うことが多く、深い傷などでは皮膚の下の神経や筋肉、腱などが切れてしまっていることもあり、専門的な状態確認や治療を行わないと後遺症が残ることがあり十分注意が必要です。また、小さな傷でも細菌などによる感染症が起こることもあり、治療開始が遅れることで症状の悪化や長期間の治療が必要になることもありますので、「大丈夫かな」と思うような場合も病院での確認をお勧めします。
打撲、捻挫など
打撲や捻挫は受傷後、家にある湿布を使っていたら自然と治ったという経験がある方も多いかと思います。確率的には「自然と治る」方が多いのですが、中には症状が続いて苦労する場合や、後々にも痛みが残ってしまい日常生活にも支障が出ている場合なども見受けられます。打撲と思っていたが、症状が続くため病院を受診したら、骨折しているのが見つかった例などもあります。また、10歳くらいまでは「足首の捻挫」と判断された患者さんの中にかなり高い確率で(軟骨を含む)骨折が隠れていることがあるという事も報告されています。痛みが続く場合などは早目にレントゲンなどでの確認をしましょう。
骨折、脱臼など
言わずと知れた、整形外科の専門分野です。ギプス固定などの治療できちんと治るか、手術治療が必要であるのかどうか、など適切に判断し、治療後の患者様の日常生活の質を落とさないように治療のプランを作ります。
関節痛(肩、肘、手首、指、股関節、膝、足首、足の指、など)
人体には多くの関節があり、骨、軟骨、靭帯、筋、など、多くの構成要素によって適切な動きができるように作られています。繰り返される動作や捻ってしまったなどのアクシデントによって関節の痛みが出てくることがあります。上記のようにたくさんの構成要素から成り立っている関節のどこに原因があるかを確認し治療を進めます。日常の診療で多く見られるのが、いわゆる「四十肩」「五十肩」と言われる、肩関節の 強い痛みと動かしにくさが出てくるような症状や、関節の軟骨が傷ついたり骨の変形が出たりすることによる膝関節周辺の痛みや腫れ、などです。診察やレントゲンでの確認などで原因をつきとめて、お薬、湿布、注射などの治療によって痛みを軽減していきます。
首の痛み、肩こり、頭痛、腕・手のしびれ など
ずいぶん長いこと、肩こりや、肩こりに伴う頭痛でお困りの方も多く見受けられます。 通常、首の骨(「頚椎(けいつい)」といい、7つの骨で構成されます)は横から見ると、少し前方に出るように緩やかに曲線を描いています。これが、慢性的な肩こりの方 では直線的に並んでいたり、通常とは逆で少し後方に出るような曲線になる場合もあります。このような頚椎の特徴はレントゲンで確認できます。頚椎に隣接して存在するのは脊髄という、脳から続く神経の大きな束です。ここから腕や手へ神経が分かれて 伸びていきます。そのため、首の部分で神経に影響が出た場合に腕や手のしびれなどの症状が出ることがあります。このような腕への神経症状は長期間ガマンしてしまうと回復が不十分になったり、重篤な神経症状に進行してしまう可能性もあるため早目に確認し、適切な治療を開始する必要があります。症状の軽いうちは内服薬やリハビリが治療の中心になります。極端に悪化してしまった場合は手術治療が必要な場合もあります。
腰痛、大腿部痛、脚・足のしびれ など
腰痛関連の症状でお困りの患者様も非常に多くいらっしゃいます。腰も頚椎とよく似た形状の骨(「腰椎(ようつい)」といい、5つの骨で構成されます。)が中心にあり、体の「大黒柱」としてしっかり支えてくれています。その分、負荷も多くかかるため、腰椎の間にある椎間板が変化してしまい椎間板ヘルニアとなってしまったり、その結果、脊髄の圧迫などが起こり神経のつながっている脚へしびれや痛みなどの症状が出てしまったりといった症状が出ることがあります。レントゲンでの確認や必要時にはMRI検査などを追加して状況を把握し治療を行います。首の場合と同様に早目の治療が大切です。
関節リウマチ
「朝、起きた後の手や指の動きが悪くこわばり感がある」 「両膝、両手首などの痛み」などの症状が代表的です。男性よりも女性に多いのも特徴です。体内で免疫反応の 不具合が生じるために起こる疾患で、レントゲン検査や血液検査などで診断します。 近年では新規治療薬の開発もどんどん進んでおり、病状をいい状態で維持できるようになってきています。気になる症状がある場合は病状が進行する前に検査を実施していくことが重要です。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
年齢が進むにつれて徐々に骨のもろさが進行していくことが分かっています。痛みなどの症状が全くない場合も非常に多く、気付いたら骨密度が低い状態になっていたという方が多い印象です。女性は年齢が進むにつれてホルモンの作用の変化が起こるため50歳を過ぎるころから徐々に骨がもろくなり始めます。この変化のせいで 「ちょっとしりもちをついただけ」 「転んで手をついた」 といった軽いケガなのに骨折をしてしまうことがあり、長期入院治療や手術が必要になる場合もあります。それまでに普通にできていたことが難しくなり「生活の質の低下」という悲しい現実を受け入れなくてはならないようなこともあります。当院では手のレントゲンを一枚撮影し解析することで数分で骨密度を測定することができます。また、血液検査でもさらに詳しく骨の状態を確認することもできます。お一人お一人に合った骨密度低下の予防法、治療法を提供し、元気に年齢を重ねていくお手伝いをさせていただきます。
痛風
関節リウマチ、骨粗鬆症は女性に多い疾患ですが、痛風は逆に男性に多い疾患です。足の親指の付け根の激しい痛みが特徴ですが、同様の強い痛みは足以外の関節にも認められることがあります。血液中の 「尿酸」 の値が高い状態が続いたり、急に変化したりした場合にこの 「痛風発作」 が現れます。食生活やアルコールなどが原因となる場合もありますが、尿酸を体内で処理する能力が不十分であるために発症することもあります。血液検査、レントゲン検査などで確認し、内服薬での治療を行います。 尿酸の値が高い状態が続くと 「痛風発作」 だけではなく、腎臓の機能が低下することもあり、重症の場合は人工透析などの治療が必要になる場合もあります。
こどもに多い疾患
肘内障(ちゅうないしょう) : 親御さんやお友達と手をつないでいて、腕を引っ張られるような状態になった後などに腕を動かさない状態になります。5歳くらいまでの子供さんに多くみられます。肘の関節の部分に骨のずれが生じることが原因ですが、同じような状態でも骨折をしている場合もあるためレントゲンでの確認を行います。肘内障の場合はこの「骨のずれ」を整復する操作を行うと比較的早く腕を使い始めるようになります。腕を 強く引っ張らないようにみんなで注意することが必要です。
扁平足(へんぺいそく) : ケガもしていないのに子供さんが夜になって脚の痛みを非常に強く訴え、朝になったら何事もなかったようにケロッとしている といった経験のある親御さんも いらっしゃるかと思いますが、原因がはっきりしないことも多いようです。子供の足は、まだ骨や筋が成長過程にあるために体重がかかった時に扁平足になることがあります。そのために脚全体に負荷がかかり、痛みの原因になる場合もあります。足の状態を細かく確認することが重要です。
スポーツ整形外科関連
現在は幼稚園・保育園などでのスポーツ教室なども盛んに実施され、高齢の方々も 御自分の体力、体調に合わせた運動に積極的に取り組まれており、各年代で多くの みなさんがスポーツをする機会が増えています。そんな中でスポーツを行うことによる障害や外傷も増えており、真剣勝負で悔しい思いをしたり、楽しくスポーツに取り組めなかったりということも少なくありません。一生懸命スポーツをがんばり、身体と精神を強くすることは、非常に貴重な経験となります。選手、指導者の方々と一緒にベストパフォーマンスを発揮するために医療という側面から協力し、感動を味わえたらと思います。投球動作による肩や肘の痛み、キック動作やジャンプによる膝の痛み、ランニングに よるすねやアキレス腱の痛み、肉離れ、捻挫、靭帯損傷、骨折、・・・ スポーツに関連する疾患は挙げていけばキリがないですが、障害や外傷が発生したら一日も早く復帰できるようにお手伝いします。