骨の量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。古くは古代エジプト文明時代からある病気なのですが、近年寿命が延び、高齢者人口が増えてきたため、特に問題になってきています。 日本では、約1,000万人の患者さんがいるといわれており、高齢者人口の増加に伴ってその数は増える傾向にあります。 骨量が減ると、複雑にからみあったジャングルジムのような網目構造がくずれて、あちこちでジャングルジムの「棒」(骨梁:こつりょうといいます)がなくなっていくので、骨が弱くなるのです。 |
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骨が弱くなると、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。 骨粗鬆症が問題になる理由をあげますと、次のようになります。 ● 高齢者の寝たきりの原因のうち約20%が「骨折」といわれています。中でも「大腿骨(だいたいこつ)」という太ももの骨の骨折が問題となります。つまり、骨折をきっかけに寝込んでしまうと、骨折が治った後も自力で歩くことが困難になってしまうのです。 ● 背骨が圧迫されてつぶれていく(圧迫骨折といいます)と、背中が丸くなり内臓が圧迫されるため消化不良や便秘になったり、食べたものが食道に逆流しやすくなり、胸焼けがしたりします。 ● 背中や腰などに、骨折に伴う痛みが出てくることがあります。 ● 痛みのために、日常生活での動作が制限され、行動範囲も狭まってしまいます。 |
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当院では骨粗鬆症に対して、錠剤による投薬、注射による治療、在宅自己注射による治療などを織り交ぜ、患者様の骨粗鬆症の進行度に合わせた治療を行っております。
一般的に骨粗鬆症のリスクが高い患者様は、閉経後の女性、50歳以上の男性で(過度のアルコール摂取をしている・現在喫煙されている・大腿骨頸部骨折の家族歴を有する)のいずれか1つを有する方と言われており、このような患者様は積極的な予防を行っていただく必要があります。ここでの「過度のアルコール」とは、1日量としてビール・発泡酒で350ml缶3本、日本酒では2合、ウイスキー・ブランデーですとダブル2杯に相当します。
○骨粗鬆症予防の食事療法
効果的な食事療法として、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを多く含む食品を摂るようにします。食事療法は特に閉経前の女性で効果が期待できます。
カルシウムの多い食品…乳製品、小松菜、大豆製品、小魚、干しエビ など
ビタミンDの多い食品…きくらげ、サケ、ウナギ、秋刀魚、メカジキ など
ビタミンKの多い食品…卵、納豆、ホウレン草、小松菜、ブロッコリー など
○骨粗鬆症予防の運動療法
運動療法にも、骨量減少を予防する効果があります。特に中等度の運動の中でもウォーキングやランニングは効果的。日常生活の中で、エレベーターではなくなるべく階段を使うなど、できるところから活動を増やしていくだけでも意味があります。
○骨粗鬆症予防の薬物療法
骨粗鬆症の予防や治療でもっともよく処方されているのは「ビスフォスフォネート」という種類の薬です。骨吸収を阻害することで骨の代謝を改善し、骨密度を増加させる働きがあります。効果的な薬ですが、飲み方には注意が必要。
朝起きた時にコップ1杯の水とともに薬を飲む
薬を飲んでから、少なくとも30分は横にならず、飲食しない
という2点を守らなくてはなりません。このことを説明すると、多くの患者さんは不思議そうな顔をされるのですが、この薬は腸管からの吸収が悪く、食事をしてしまうとさらに吸収されにくくなってしまうためです。また、食道潰瘍や食道炎の副作用を起こすことがあるので、このような飲み方になっています。忙しい朝に煩わしいかもしれませんが、毎日ではなく月に1回だけ飲めばよい種類のものもありますので、毎月、1日などに決めて飲んでいる方もいらっしゃいます。