血圧とは血管を押す圧力です。高い血圧が続いていると全身の血管が高い圧力で圧迫され、血管がもろく硬くなる動脈硬化が発生します。動脈硬化により血管がつぶれたり破れたりすることが起こります。これが高血圧の合併症です。脳に起これば脳卒中、心臓に起これば心筋梗塞、腎臓に起これば慢性腎臓病です。
高血圧は、サイレントキラー(沈黙の殺し屋)と呼ばれています。なにも症状がないのに、ある日突然合併症を起こします。
つまり、高血圧とは、自覚症状がなく、高い血圧により血管がもろく硬くなり、突然合併症を起こして倒れたりする病気です。
高血圧は『国民病』と言えるでしょう。約4000万人の患者さんがいて、30歳以上男性の47%、女性の43%が高血圧です。60歳台の61%、70歳台の72%が高血圧です。
病院での血圧が140/90mmHg以上を高血圧といいます。全世界共通の基準です。
一方正常血圧は130/85mmHg未満が正常血圧です。最適な血圧は120/80mmHg以下です。
血圧140/90mmHg以上は危険な血圧と考えられるため高血圧と定義付けられています。例えば、脳卒中発症のリスクは血圧130mmHgが140mmHg台になると約2倍高くなり、心血管死亡のリスクは1.5倍高くなります。血圧が高ければ高いほどのリスクは高くなります。血圧が10mmHg高くなると、脳卒中は男性で20%・女性では15%脳卒中にかかりやすくなり死亡する危険が高まります。また、同様に10mmHg血圧が高くなると、男性では心筋梗塞などの病気にかかり死亡するリスクが15%高くなります。
つまり、血圧が高ければ高いほど、脳卒中・心筋梗塞・腎臓病にかかりやすく死亡率が高くなります。
日本人の高血圧の特徴として、塩分摂取が多いことが挙げられます。血圧に関しては、塩分を多くとればとるほど血圧が高くなります。現在の日本の食塩摂取は、1日約12gです。高血圧の患者さんの塩分摂取量としては6gが推奨されています。
高血圧の90%以上は、遺伝・年齢・生活習慣(塩分などの食生活、肥満、運動不足、お酒、喫煙など)の色々な要因が重なり発症すると考えられています。約5~10%は、腎臓病・血管の病気・ホルモンの病気などが原因です。
高血圧の約90%が色々な要因で発症します。その中で生活習慣も大きな要素を占めます。食生活で塩分多い食事や運動不足、肥満、お酒の飲み過ぎや喫煙は血圧を高くします。逆にいいますと、これらの生活習慣を改善すれば血圧は下がります。
高血圧の治療の目的は、血圧をしっかり下げて脳卒中・心筋梗塞・腎病にかからないこと、また、残念ながら病気にかかっている方は病気の再発や死亡を防ぐことです。高血圧があっても、元気に健常者と同じ生活を送ることが最終目標です。
上の血圧(収縮期血圧)が10~20mmHg、下の血圧(拡張期血圧)が5~10mmHg下がると、脳卒中になるリスクが30~40%、心臓の病気になるリスクが15~20%も低下します。日本人全体で血圧が2mmHg低下すると、脳卒中になる人が6%低下し、心臓の病気にかかる人の割合が5%もの減少が期待できます。わずかな血圧の減少でも大きな効果が生まれます。そのためにも治療は必要です。
高血圧の治療は、大きく二つに分かれます。生活習慣を修正することと薬の治療です。
生活習慣改善のためには減塩とDASH(ダッシュ)食(野菜と果物を多く、コレステロール・脂肪の少ない食事)、運動をして減量、お酒も適量で禁煙が必要です。これらの生活習慣が改善できれば、血圧は2~5mmHg低下します。
生活習慣の改善も必要ですが、血圧を低下させる効果が弱く高血圧のほとんどの方は薬の治療が必要となります。薬の治療の場合でも、生活習慣の改善で薬の種類や量が少なくなる可能性があります。
薬による治療は、当初より血圧がかなり高い方や糖尿病がある方や腎病のある方はすぐ治療が必要です。血圧の薬は、血管を広げる薬・ホルモンに作用する薬-神経に作用する薬-塩分を出す薬・心に働く薬などいろいろあります。年齢-血圧の程度・もっている病気などによりどの薬を使用するか決まります。
高血圧を指摘されてもほとんどの方は無症状ですが、高血圧により全身の血管がダメージを受けています。そのまま放置すると、この間にどんどん血管がもろく硬くなる動脈硬化に進展して合併症のリスクが高くなります。放置せずに、当院を受診して下さい。