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 認知症について

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認知症

父の認知症と私のターニングポイント(平成20年)

早いもので織田病院に勤務して6年が経ち、勤務医としては20年間外科医療に携わってきまし た。これまで培ってきた医療技術を生かしつつ今後どのような形で地域社会に貢献していけるのかなどと考えていた4月初旬のある日、突然母から電話がありま した。「お父さんがもうだめよ、もう閉院しないと、、、」。目の前が真っ暗になった。ついに来る時がきたかと思った。昨年末から父の様子がおかしくなって いたのは薄々感じてはいたがアルツハイマー型認知症の進行であった。この病気が発症する過程は、脳の中にβアミロイドと呼ばれるタンパク質が増えてたまり 出す。βタンパクは中性エンドペプチド(酵素)が分解するが、患者にはこの酵素量が少なく神経細胞死がおこり発症するようである。詳細は不明だがいくつか の遺伝子異常が判明しており、アミロイド蛋白の沈着や神経細胞脱落のメカニズムも明らかになりつつある。非家族性のアルツハイマー病ではApo E(ア ポ・イー)という物質に関する遺伝子異常が多いこともわかってきたが、それがあるから必ずしもボケるというわけではないらしい。

認知症は、「生活習慣病」の終着駅とも言われ、ボケる人の職業No1は公務員、No2は教師だ そうである。話を戻しますが、父は既に診療が継続できる状態ではなく、なぜもっと早く気づいて対処してあげられなかったのかと後悔しました。これまでいろ いろな方々に協力を頂き今まで何とかやってきましたが、患者さんも含めて織田病院やいろんな方々に多大なご迷惑を掛けてしまいました。労働基準や医師会・ 社会保険事務局などの問題もあり、現在の医療制度の中でこの診療体制を継続していくのは困難なことと、父の病状の悪化に伴い自分が何とかしなければとの思 いが強くなり実家に帰り父の医院を継承することを決断しました。

認知症の病型分類

 

認知症は多い順に、①アルツハイマー型認知症(ATD55%、②レビー小体型認知症(DLB15%、③脳血管性認知症(VD10%、④ATDVDの混合型7.5%、⑤DLBVDのレビーミックス5%、⑥前頭側頭型認知症(FTD:ピック病を含む)2.5%、⑦その他5%に分類されます。しかし、これらの確定診断は死後の脳の病理診断によって確定されるものでもあります。臨床的には、生前の症状や画像診断などによって診断されますが、認知症の病型はこれらが複雑に関連している場合があり、また継時的変化(進行または改善)していくものです。実際には、アルツハイマー型の病理組織を持つものが62.5%、レビー小体型認知症の病理組織を持つものが20%とされています(コウノメソッドより)。

脳のなかの老廃物

1997年にタウオパチーという家族性(遺伝性)痴呆疾患が報告されました。これは脳内にタウ蛋白という物資(脳内の老廃物)がたまって発症する認知症のことです。アルツハイマー型認知症の場合、βアミロイドというタウ蛋白がたまってきます。レビー小体型認知症の場合は、αシヌクレイン(レビー小体)という物質がたまってきます。前頭側頭型認知症のなかのピック病の場合は、ピック小体というタウ蛋白がたまってきます。そのほか、タウ蛋白がたまって起こる病気に進行性核上性麻痺(PSP)や大脳皮質変性症(CBD)などがあります。

厄介なのはアルツハイマー型の場合、症状がでる20年前からタウ蛋白の一つであるβアミロイドがたまってきていることです。若い人では60歳前後でこのたんぱく質がたまり終わってから症状が出るというこで、40歳ごろから脳の老廃物であるタウ蛋白がたまりだすということです。

認知症は予防できる?

すべてではありませんが、予防は可能です。まず脳血管性認知症の場合は間違いなく動脈硬化が影響しているので、高血圧や高コレステロール血症(脂質代謝異常)、糖尿病などの生活習慣病を予防あるいはコントロールすることで認知症を予防することができます。多くの認知症の場合、脳血流の低下が悪さをしているからです。

日本の場合、認知症患者が約460万人で、軽度認知障害(MCI)患者400万人を含めると約900万人で、人口の12人に一人に認知症が出る可能性があります。今後団塊世代を迎え高齢化社会がピークに達すると爆発的に認知症が増える可能が心配されています。

しかし、イギリスでも日本と同じようなことが心配されていましたが、高血圧や高コレステロール血症(脂質代謝異常)、糖尿病などの生活習慣病を予防することで、実際には認知症の患者さんは増えなかった(予防することができた)とのことです(厚生会道ノ尾病院 芦田 巧先生の講演より)。

高血圧症には、dipper型、non-dipper型、riser型とありますが、いずれも血圧のコントロールすることにより認知症を予防できることが分かっています。高コレステロール血症(脂質代謝異常)も動脈硬化による脳血管性認知症以外にアルツハイマー型認知症のリスクが高まることが分かっています。糖尿病の場合、HbA1cの値が7.0%以上(日内変動が大きいほど)でβアミロイド蛋白のたまりが高まり認知症になる可能性が4~5倍高まります。また、骨粗しょう症も骨折により、生活の質が落ちるため認知症になる可能性が高まります。

近年、肺炎による死亡率が上がっており肺炎球菌ワクチンの接種が勧められていますが、これも認知症患者さんの誤嚥性肺炎(認知症が進むと物が飲み込みにくくなり肺炎を起こしてしまう)が増えてきているのが原因の一つです。

また、うつ病もアルツハイマー型認知症のリスクを上げてしまいますし、うつ病+糖尿病の患者さんは3~5年で2倍以上の認知症発症を報告されています。何気ない生活習慣病を予防あるいはコントロールすることが、認知症の予防につながるということです。

認知症の病型と脳血流が低下する場所 (大脳を側面から見た図)

アルツハイマー型認知症(ATD)

長年の間「アミロイドたんぱく」という物質が脳に増えていき脳細胞を破壊して発病します。主に頭頂葉という脳が障害を受けるので空間の見当がつけられなくなるので家に帰れなくなったり、迷子になったりするのが特徴です。また、側頭葉の内側にある「海馬」という記憶の出入り口も萎縮するので、食事をしたことなど近い記憶が障害されるのが特徴です。初期の段階では、言葉の意味が理解できないとか言葉が出ないなどの症状はなく、一見認知症には思えないことも多いです。自分が病気だと認識はありません。症状の悪化に伴い、一律に認知症治療薬のドネペジル塩酸塩錠(アリセプト)などを増量するとかえって症状を悪化させる場合があります。

 

脳血管性認知症(VD)

本人が自覚できない小さな脳梗塞(隠れ脳梗塞、多くの場合多発)を含め脳出血などの脳卒中の後遺症としてあらわれてくるものが増えています。高血圧や糖尿病をもつ男性に多いのが特徴です。前頭葉の血流に障害が出るので、ちょっとしたことで泣く・笑うなど(感情失禁)、尿失禁、うつ症状、夜間せん妄(意識障害をともなう不穏)、不眠などが現れます。表情が暗くなり、あまりしゃべらず、動作が鈍くなることが多いです。

レビー小体型認知症(DLB)

大脳全体と脳幹部にレビー小体という物質(封入体)が増るため認知症がでます。パーキンソン病はこれが脳幹部だけに現れて起こります。このためパーキンソンニズム(歩行障害、手のふるえ、歯車現象:腕の関節のカクカクした動きなどパーキンソン病的な症状)が出現し、物忘れなどの認知機能低下、幻視、せん妄、うつ症状など様々な症状が出現します。薬に異常に反応してしまうことがあるので、認知症治療薬のドネペジル塩酸塩錠(アリセプト)や風邪薬などで興奮したり歩けなくなったり症状が悪化する場合があるので注意が必要です。アルツハイマー型と誤診されることもあり、また混合する場合もあります。

前頭側頭型認知症(FTD、ピック病を含む)、意味性認知症(SD)

脳の前頭葉や側頭葉に病変が起こってくるものに、ピック病や意味性認知症があります。ほかの認知症が70歳を過ぎてから発症するものが多いのに対して、これらは50歳代から起こってくることも多く、若い年齢から発症するのが特徴的です。「自分を制御する」前頭葉に障害を受けるため、傲慢になったり態度が横柄になったりします。ピック病の場合、自分のやりたいようにやってしまい、使用行動(他人の物を勝手に手にする)、介護拒否、暴言・暴力、万引き(本人は万引きと思っていない、お金を払わずにお店を出てしまう)、性的問題行動などが治療の対象になります。同じことを繰り返してしまう(常同行為)や甘いものばかり食べるなど特徴ですが、知能テスト(長谷川式HDS-Rなど)は正常なこともあります。

意味性認知症では、言葉や物の意味が理解できないため会話が成り立ちません。記憶は保たれていても意味が分からないので色々な失敗もあり知能テストも悪くなります。ただし、どちらもアルツハイマーのように道に迷うことはありません。

混合型認知症

脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症との合併が最も多く、コウノメソッドでは脳血管性認知症とレビー小体型認知症との合併は「レビーミックス」、ピック病との合併は「ピックミックス」と分けて考えられます(これらは興奮系のお薬が副作用のため使えないため)。薬が合わないと、激しい症状やせん妄が伴い介護が困難になります。また、レビーにピックが合併した認知症を「レビー・ピック・コンプレックス(LPC)」といいこれにも独自の治療法があります。

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