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こどもの腹痛

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おおはしこどもクリニック
大橋 祐介

こどもの腹痛について

こどもの腹痛には様々な原因があります(表)。多くは胃腸炎や便秘が原因となりますが、なかには虫垂炎や腸閉塞など緊急性が高く、手術が必要となる場合もあります。また、腹痛を訴えていても必ずしもお腹の中に原因がなく、肺炎や気管支炎といった呼吸器疾患、鼠径ヘルニア(脱腸)、精巣捻転症が原因となることもあり、ひどい咳や胸がゼイゼイしていないか、鼠径部(股の付け根)や陰部に異常がないかなど、お腹以外も注意深く観察することが大切です。
また、幼小児では成人や大きな子のように痛みの場所や程度、性質を正確に訴えることができません。食欲がない、元気がなく横になっている、泣き止まないといった症状でも腹痛が原因となっていることがあり注意が必要です。

こどもの腹痛の原因として多い疾患

・急性胃腸炎(感染性胃腸炎)
こどもの胃腸炎の原因は多くはウイルス(ロタ、アデノ、ノロなど)の感染によって起こります。ときに細菌感染(大腸菌、サルモネラなど)が原因となることもあります。特にO157を代表とする病原性大腸菌の感染では溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こし重篤となることがあり注意が必要です。症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱などを認めます。腹痛には波のあることが多く、下痢便の排泄時に強くなります。また、嘔吐の性状は多くは胃内容物(食べたり飲んだりしたのも)で発症初期にみられることが多く、後に下痢が主体となる傾向があります。治療は整腸剤や制吐剤の投与により改善することがほとんどですが、小児は成人に比べて脱水になりやすく、脱水を認めた場合は点滴など脱水に対する治療を必要とします。お子さんの機嫌が悪い、目の周りが窪んでいる、ぐったりする、排尿がないなどの症状は脱水を疑う所見なので注意しましょう。

・便秘
こどもの腹痛の原因としては比較的多く、下痢を伴わない、間欠的な腹痛(痛くなったり、治まったりを繰り返す痛み)を訴えます。幼小児では便秘で嘔吐する場合もあり、胃腸炎の初期との鑑別は難しい場合があります。問診でもともと便秘がちで普段とても硬い便が出ている、数日間排便が確認できていない場合などは便秘による痛みを疑います。浣腸を行い、しっかりとした量の排泄が得られ、腹痛が治まれば便秘が原因であったと考えます。ただし、急性虫垂炎や腸捻転などでも、浣腸による排便や排ガスで一時的にお腹の圧がとれて症状が改善する場合もあり注意が必要です。浣腸で一時的によくなっても、その後に腹痛の悪化など緊急を要する症状(後述)を認める場合は、再度病院を受診するようにしましょう。

緊急を要する症状について

こどもが腹痛を訴えた時に大切なことは、手術などの外科的処置を含めて、緊急に治療を必要とする状態、疾患を見逃さないことにあります。下記に示すような症状を認める場合は早急に診察を受ける必要があります。
・痛みの程度やお腹の張りがだんだん強くなる。
・痛みで動かない(歩けない)、ぐったりする、泣き止まないなどの症状を伴う。
・繰り返し嘔吐する、吐物が茶色や緑(胆汁性嘔吐)、吐物に血液が混ざる。
・下痢に血液が混ざる(粘血便)、下血を認める。

緊急性のある疾患について

・急性虫垂炎
大腸の始まりの盲腸という所に突起物のように付着している部位を虫垂といい、同部に細菌が繁殖し炎症を起こすと虫垂炎となります。進行すると虫垂が破裂、穿孔し腹膜炎となるため手術を含めた治療を必要とします。症状としてはお腹の痛みが段々と強くなり、次第に右下腹部に集中した強い痛み、圧痛を認めます。初期には熱のないことが多いですが、進行すると発熱に加え嘔吐、下痢を伴い、おなかの痛みも腹部全体へと広がってきます。お腹を押した時よりも離した時の方が痛い(反跳痛)、歩行時にお腹に響きかがんで歩くなどは腹膜炎の兆候で、注意が必要です。

・腸重積症
自分の腸の中に腸がはまり込んで腸閉塞を起こす病気で、2歳くらいまでに多く発症します。進行すると腸管の壊死をきたすため早急な治療を必要とします。症状としては、10~15分位の間隔でお腹が痛くなるため激しく泣いたり、治まったりを繰り返す(間欠的啼泣)、その後に嘔吐や血便を伴います。症状がすべてそろわないこともありますが、腸重積を疑った場合は早急に病院を受診しましょう。

・鼠径ヘルニアの嵌頓
鼠径ヘルニアとは、本来胎児期に閉鎖するお腹とつながった袋が、生まれた後も残存してしまうことで、鼠径部(股の付け根あたり)にお腹の中のもの(腸や大網、女児では卵巣など)が脱出してしまう病気です。普段は脱出したりお腹の中に戻ったりを繰り返し、鼠径部が膨らむ程度で痛みを訴えることは少ないですが、袋の中に内容物がはまり込んで戻らなくなる(嵌頓)と鼠径部が硬く腫れたり、赤くなったりします。また、腸閉塞を起こして腹痛や嘔吐が出現します。はまり込んだ腸や卵巣は血流が悪くなり壊死を起こす場合があり、早急な対処を必要とします。自分で痛みの場所を訴えられない年齢の子がお腹を痛がる場合はパンツやおむつの中も確認することが大切です。

・精巣捻転症
精巣と精巣を栄養する血管が急に捻転し、精巣の壊死をきたす緊急を要する病気です。学童期から思春期前後に多く、寝ている時や運動後に発症しやすいという特徴があります。発症後、徐々に陰嚢が腫脹し陰嚢の強い痛みを認めますが、症状のうまく伝えられない年少児ではお腹が痛いと訴える場合があり、陰嚢の所見を見落とさないことが大切です。治療は発症後12時間以内、できれば6時間以内に手術を行い、捻転を解除すれば精巣を温存できることが多いのですが,それ以上経過すると精巣は壊死してしまうため、摘除しなくてはならなくなります。

 

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